八千草 薫は、日本の女優。 大阪府出身。宝塚音楽学校卒。所属事務所は柊企画。愛称は「ヒトミ」。公称身長154cm。 生年月日: 1931年1月6日
名言
時間というのは、人間にも動物にも植物にも平等に与えられるものです。死も一緒です。生きとし生けるものに、確実に訪れます。
全ての生き物の中で人間だけが、取り返しのつかない過去を嘆いたり、どうなるか分からない未来を不安がったりしています。過去や未来のことを心配しても何にもなりません。どうにもならないことは考えなくていいのです。
何を大事にして生きればいいのか。それは「今」です。1日をきちんと大切に生きるというのが、本当はとても難しい。目の前のことをごまかして先に進んでも、結局はうまくいかなくなります。私は「今」というこの瞬間から逃げず、一瞬一瞬を大事にして生きたいです。
昔は「歳をとる」という現象について、深く考えることはありませんでした。気づいたら20代、30代、40代……あっという間に時を刻んでいました。
ごまかしてそのまま先に進んでも、何か居心地が悪い
家族っていうのが、一番人間にとってホッとするところ
否応なく“体力の衰え”という現実を突きつけられると、やっぱりショックを受けますよね。
「歳をとる」というのは、皆、経験したことがないですから、いつでも初体験。未知のものは誰だって怖いでしょう。
体力、筋力、思考力が低下していくなかで、不安になることもあります。でも、どうにもならないことを、うだうだと考え続けるのはつまらない。それで50歳まで若返るわけでもないですしね。変わっていく自分をちょっとずつ受け入れていくしかありません。だから悩みが出てきたときは、「えいっ!」と思い切って、考えること自体を諦めてしまいます。そうやって楽しく、肩の力を抜いて、歳をとることができればいいなと思っていますね。
膵臓癌と診断が出たとき、私は意外とショックを受けませんでした。その時、どんな感情だったのかを表現するのは難しいのですが、「あ、とうとう来たんだ」という感覚でした。そうやって現実がすとんと、自分の中に落ちてきたのです。
もっと若い頃にがんになっていれば、不安を抱えたのかもしれません。「夢があるのに」「まだまだ生きると思っていたのに」と、悲観的になったかもしれません。でも、今の私は80歳を超えていて、この先そんなに長く生きる年齢ではない。寿命がすぐそこに見えているという事実が、私を冷静にさせました。
「まぁ、病気になってしまったものは、しょうがないな」そう思って、日々をしっかりと、精一杯生きていくしかないのだと思います。決して強がりを言っているのではありませんよ
ここ数年は年齢のこともあって、ドラマのお仕事をいただくたびに「これが最後かな」と覚悟して臨んでいました。
役者さんの中には、「舞台で死ぬのは本望だ」とおっしゃる方もいます。そんな最期を迎えられたら、それはもちろん素晴らしいことです。でも私はずっとこう決めていました。「誰かに迷惑をかけるようになったら、女優はやめよう」映画やドラマなどの作品作りには、驚くほど多くの方が携わっていらっしゃいます。途中で何かあれば大勢の方に迷惑がかかってしまう。そこまでして、女優という仕事をしていたくはないのです。
焦って無理をしすぎると、周りに迷惑をかけてしまう。逆に、全く無理をしないと人生の可能性を狭めてしまいます。これからは、欲は持ちすぎず、“ちょっとだけ”無理をして生きていこうと思っています。
人の寿命は神様が決めるもの。主人が亡くなった過去は変えられません。
私はものが捨てられない性質で、「断捨離」という言葉が苦手です。ものを捨てるというのは、それにまつわる「思い出」も捨てるということ。自分の身を切られる感覚があるのです。だから私は今もたくさんの「思い出」に囲まれて生活を続けています。
何か一つのことにのめりこむということがなかなか出来ない性格で、興味があることを見つけると足を踏み入れたくなるのです。欲張りなのかもしれません。
今振り返ると、こっちに行ったりあっちに行ったりとふわふわしていて、仕事に対する厳しい姿勢が足りなかったのではないかと少し反省することもあります。ですが、別の世界を持っていたことで、様々な貴重な経験ができ、結果的に視野を広げることにも繋がりました。
自然の中に身をおいて、四季を感じ、動植物と触れ合う。そんな時間が私にとっては何よりの宝物なのです。
歩いていこう。とにかく歩けば少しでも良くなるかな