Malcolm X
マルコムX(1925年~1965年)
米国の黒人公民権運動家。
1925年5月19日、ネブラスカ州オマハに生まれる。
牧師だった父は白人に媚びて仕事をもらうことを良しとせず、自宅敷地内に家庭菜園を作りほぼ自給自足に近い生活を送った。
そのため一家はKKK(白人至上主義団体)の標的にされ、1931年、父は人種差別主義者によって殺害された。その後、母は精神を病み、9人の子どもたちはそれぞれ里子に出される。
白人の上流階級の家に引き取られたマルコムは、幼い頃から優秀な成績を収めていたが高校を中退。ボストンへ移り、靴磨きの仕事に就く。
その後、ニューヨークのハーレムでギャンブル、麻薬取引、売春、ゆすり、強盗に手を染めた。
20歳のときに強盗の罪で逮捕。獄中でブラック・ムスリム運動に出会う。出所後、ネーション・オブ・イスラム教団(NOI:黒人の経済的自立を目指す社会運動および白人社会への同化を拒否し、黒人の民族的優越を説く宗教運動)のスポークスマンとなり、一躍名を知られるようになる。
しかし、教団指導者が少女を強姦し子を産ませていたことが判明。マルコムはNOIに失望し、告発。教団はマルコムを暗殺しようとしたが失敗に終わる。
1964年3月にキング牧師と最初で最後の対面をしている。
その後、マルコムは伝統的イスラム教に回帰、アフリカ系アメリカ人統一機構を組織するが、NOIとの緊張は増加。1965年2月21日、教団の暗殺指令を受けた信者により銃殺され、39年の生涯を閉じた。
マルコムは一時キング牧師を「弱腰」と批判していたが、晩年の2人の主張や姿勢は逆転していたとされている。
ボクサーのモハメドアリは、マルコムの思想に啓蒙され、イスラム教に改宗。ベトナム戦争の徴兵令も拒否した。
マルコムの死後に出版された「マルコムX自伝」は、タイム誌によって20世紀の10冊の最も重要なノンフィクションの一つに選ばれた。
名言
The government is responsible for the oppression and exploitation and degradation of Black people in this country. This government has failed the Negro.
この国では、黒人への弾圧、搾取、汚職が職務だ。この政府は、ニグロを見捨てた。
The type of Black man on the scene in America today doesn’t intend to turn the other cheek any longer.
今日のアメリカのシーンで黒人は、これ以上、もう片方の頬を差し出すようなことはしない。
If you don’t stand for something, you will fall for anything.
信念を持たない人間は、あらゆることに流される。
If you have no critics, you’ll likely have no success.
もし君を批判するものがいないなら、君は恐らく成功しないだろう。
I don’t see any American dream; I see an American nightmare.
アメリカンドリームなんて見たことがない。私にはアメリカの悪夢だ。
My alma mater was books, a good library. I could spend the rest of my life reading.
私の母校は書物、良き図書館だ。残りの生涯をすべて読書に費やしてもいいと思える。
Our objective is complete freedom, justice and equality by any means necessary.
我々の目的は、いかなる手段をとろうとも、完全な自由・正義・平等を確立することだ。
We need to expand the civil-rights struggle to a higher level – to the level of human rights.
我々は、公民権の闘争を、より高レベルとなる人権の闘争へと発展させる必要がある。
I’m not an American. I’m one of the 22 million Black people who are the victims of Americanism. One of the 22 million Black people who are the victims of democracy.
私はアメリカ人ではない。私は、アメリカニズムの犠牲者となった2,200万人の黒人の中のひとりなのだ。民主主義の犠牲者である2,200万人の黒人の中のひとりなのだ。
Truth is on the side of the oppressed.
真実は、虐げられる側にある。
Education is our passport to the future, for tomorrow belongs to the people who prepare for it today.
教育こそが未来へのパスポートだ。明日という日は、今日準備をする人たちのものである。
Once he is motivated no one can change more completely than the man who has been at the bottom.
いったん動機づけを与えられると、どん底にいた人間ほど、見ちがえるように変わることができる。
A ballot is like a bullet. You don’t throw your ballots until you see a target, and if that target is not within your reach, keep your ballot in your pocket.
投票(ballot)は弾丸(bullet)に似ている。あなたはターゲットを見る前には投票しないだろう。そして、そのターゲットはあなたの届かないところにいて、投票券をあなたのポケットのなかに入れさせておく。
Civil rights means you’re asking Uncle Sam to treat you right. Human rights are something you were born with. Human rights are your God-given rights.
公民権というのは、アンクル・サムに正しく扱ってくれとお願いすることだ。人権というものはあなた方が持って生まれたもの、神に与えられたものだ。※アンクル・サムは、米国を擬人化した架空の人物、米国の象徴
This is the press, an irresponsible press. It will make the criminal look like he’s the victim and make the victim look like he’s the criminal. If you aren’t careful, the newspapers will have you hating the people who are being oppressed and loving the people who are doing the oppressing.
無責任な新聞は、犯罪者を犠牲者に、犠牲者を犯罪者にすり替える。もしあなた方が注意深く見ていなければ、新聞はあなた方を操って、抑圧されている人間を憎み、抑圧している人間を愛するように仕向けるだろう。
It’s time now for you and me to become more politically mature and realize what the ballot is for; what we’re supposed to get when we cast a ballot; and that if we don’t cast a ballot, it’s going to end up in a situation where we’re going to have to cast a bullet. It’s either a ballot or a bullet.
今こそあなたと私は、より政治的に敏感になり、何のための投票なのか、 票を投ずる時に何を得ることを支持するのか、はっきりと理解するときだ。そして、もし我々が投票しないのならば、弾丸が撃たれなければならないような事態に陥るだろう。投票か弾丸かどちらかだ。
To have once been a criminal is no disgrace. To remain a criminal is the disgrace.
前科者であることは恥ではない。犯罪者であり続けることが恥だ。
You and I, 22 million African-Americans – that’s what we are – Africans who are in America. You’re nothing but Africans. Nothing but Africans.
あなた方と私、2,200万人のアフリカ系アメリカ人は - それが他でもない我々そのものだ - アメリカにいるアフリカ人なのだ。あなた方は他でもない、アフリカ人だ。アフリカ人なのだ。
It was, as I saw it, a case of ‘the chickens coming home to roost.’ I said that the hate in white men had not stopped with the killing of defenseless black people, but that hate, allowed to spread unchecked, had finally struck down this country’s Chief Magistrate.
それは、私が思うに「鶏が鳥小屋に帰って眠るように」起こるべくして起こった事件だ。すでに言及しているが、白人が心の中にもつ無防備の黒人に対する殺意が止まず、さらにその憎悪の拡大が容認され、終には大統領を殺してしまった。※ケネディ大統領暗殺事件について
People don’t realize how a man’s whole life can be changed by one book.
一冊の本に人生を丸ごと変えてしまう力があることを、みんな理解していない。
If you’re not ready to die for it, take the word ‘freedom’ out of your vocabulary.
自由のために死ぬ覚悟がないのなら、「自由」という文字をお前の辞書から消すがいい。
The media’s the most powerful entity on earth. They have the power to make the innocent guilty and to make the guilty innocent, and that’s power. Because they control the minds of the masses.
地球上で最大の権力を持つ組織はメディアだ。奴らは無実の者に罪を着せ、罪深き者を無実にする力を持つ。これこそが権力だ。奴らは大衆の心を操っている。
You’re not to be so blind with patriotism that you can’t face reality. Wrong is wrong, no matter who does it or says it.
盲目的な愛国心のせいで、現実を直視できないようになってはいけない。どんな人物がやろうとも、どんな人物が語ろうとも、間違ったものは間違っている。
Any time you know you’re within the law, within your legal rights, within your moral rights, in accord with justice, then die for what you believe in. But don’t die alone. Let your dying be reciprocal. This is what is meant by equality.
いかなる時もあなたは法律の中に、あなたの法的権利の中に、あなたの道徳的権利の中にいて、正義に従い、そして信じるところのために死ぬ。しかし、一人では死なないで欲しい。死のお返しをさせてくれ。これが平等の意味するところだ。
It’s time for us to submerge our differences and realize that it is best for us to first see that we have the same problem, a common problem.
今こそ我々は、我々の違いに目をつむるときである。そして第一に、我々は同じ、共通の問題を持っていると着目することが、我々にとって最良であると認識するときなのだ。
You let that white man know, if this is a country of freedom, let it be a country of freedom; and if it’s not a country of freedom, change it.
白人に知らせよう、もしここが自由の国ならば、自由の国のようにせよと。自由の国でないなら、変えようではないかと。